天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず


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今日はバイトなんだけど、マル特らしい。短時間でたくさんお金がもらえるマル特。しかし、昔と比べるとマル特のバイト単価は落ちているらしい。そういう話を知識しているとやる気が微妙に落ちる。「チョイノリは30キロが平均速度で僕のチョイノリは35キロまで出る。でも他人の話を見聞きすると45キロくらいは出る乗り物らしい」ことを知った時に似た気持ちになる。しっかりしろよスズキ!じゃない、セコいぞシャチョー!
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??というようなことをバイトに行く前に書いた。何から書き出したらよいのだろう。バイトが終わったあと、本屋をハシゴしてマンガを買う。家に帰ってシャワー浴びてマンガを読む。夕飯の買い出しに行く。夕飯を作って食べる。本を読む。メールチェックする。少しウトウトしたいと思って寝る。ウトウトのつもりが爆睡になる。

「少しウトウトしたい」というのは「まだ寝たくない、眠いけどまだやりたいことがあってすっきりしない」という願望だ。しかしやはり疲れている時はそんな器用な睡眠はとれない。そう、つまり疲れたということが言いたい。疲労した。

現場はどこだったのか確かめる余裕もなかった。汐見橋のインターの近くということはわかるのだが、そもそもその辺の地理はピンとこない。我孫子筋を登って橋を渡って、動物園の横を下って、芦原橋駅を越えて??途中で野宿生活者のテント通りみたいなのがある公園沿いの高架下を通った。そう、今日は僕も運転をして現場まで行かねばならなかった。主任が先導し、真ん中が僕で、主任を見失ってしまったときに入れ替わって先導してもらうために後ろを社長が行く。社長に見られながら運転するというのは何ともストレスな??いやはっきり言ってめちゃくちゃ嫌だった。

現場は50メートルくらいの坂道の終わりくらいにあるビルの2階で、1階は貸し倉庫になっていて天井が普通のビルより高い。2階に上がるのに3階分くらい登らなければならなかった。

壁の厚い飾り気の無いビルで、3畳の台所に6畳という間取りの部屋だった。長靴を履き、雨合羽を着、ゴム手袋をはめ、最後に防毒マスクを付ける。防毒マスクを付けて作業していると鼻水なのか汗なのか*1がマスクの中で垂れてきてとても不愉快だ。社長と主任が部屋の中で段ボール詰めをし、僕はそれらを下ろしていく。段ボール箱は全ての隙間をガムテープで目張りして臭いが漏れるのをできる限り防ぐ。段ボール箱の中にはビニール袋を噛ませてある。

中で作業している2人のペースに合わせて、詰め終えた段ボールを目張りして下ろすだけなのだから楽な作業に思える。しかし、1回下ろしてまた上がってくると息が上がっている。マスクが唇の周りでぶるぶる痙攣する。いや、痙攣しているのはアゴなのか??マスク越しではどうしても酸欠になる。

今日一番つらかったのが酸欠だった。寄せ場飯場の労働者に、致死性のガスが詰まったタンクの中でマスク付きで作業した話を聞いたことがある。15分作業したら30分休憩するという話を聞いてなんてぬるい仕事だろうと思った。話をしてくれた彼はマスク付きでは長くは作業できないこと、酸欠になったら周りが致死性のガスだとわかっていてもマスクをずらしてしまう危険があることを言っていた。確かにこれはたまらない*2

最後に畳を出す。お亡くなりになった痕跡が畳に茶色く残っている。切ったビニールシートを貼ってカバーして出す。汚れが軽い畳は社長がでかい包丁みたいので2つに切断した*3。なんだあのでかい包丁は。持ってきたのかここにあったのか。屠殺用のナイフというのはあんなだろうか。普通のご家庭ではあんなでかい肉厚の包丁はいらない。

雨合羽などの装備品を脱ぎ捨てると池にはまってしまったかのように全身が汗でずぶぬれになっている。長靴の中にも汗が溜まっていてこぼれ落ちる。体重へった。やっと普通に空気が吸える。高校の部活で酸欠になった時よりもきつい気がする。タンクトップで運転して帰る。帰りは阪神高速を使った*4。臭いをしょいながら市内を走ることをためらったためだ。

帰ってプレス車にかませて終わり。やれやれだった。

いつもの約2倍のバイト代をもらったがきっちりいつもの2倍は疲れている。2倍程度ではやれんなあと思った。しかし今回は依頼主の人が寸志と言って包んでくれた中に人の上に人を作らない人が入っていた。とても嬉しい。金銭的にも嬉しいが、きつくて汚れる仕事に配慮してくれたという気持ちで嬉しい。普通の引っ越しゴミ出しレベルでもらうのは少し申し訳ないが、こういう時はいいと思う。



*1:まあ成分はそう変わらない。

*2:風の谷のナウシカ』を思い出したりもする。マスクをしたまま何週間も腐海の上をとび続けるとかそりゃあ嫌だなあとしみじみ思う。

*3:プレス車に噛ませるときに噛みやすいように。

*4:高速道路を走ったのは教習以来だ。