カブとチョイノリ


本田宗一郎本伝 飛行機よりも速いクルマを作りたかった男』というマンガを古本屋で買って読んだ。別に本田宗一郎に興味があったわけではないが、「世界のHONDA」の「一発始動のスーパーカブ」のエピソードを読んでみたいと思って買ったのだった。

一番最初のカブは本当に自転車にエンジンと燃料タンクを乗っけたような代物だった。このカブ用に開発されたのがOHVというエンジンである。これは二輪車のエンジンとしては既に旧式で、現在では発電機や草刈り機に搭載されているようなエンジンだ。しかし、これが実はチョイノリにも搭載されている。

スーパーカブ以前のカブのために開発されたOHVエンジンがチョイノリにも搭載されていると知って僕はチョイノリって素晴らしいと思った。マンガを読むと次々にバイクを改良していく過程がわかる。スーパーカブに到達するまでをストーリー上で長く取ってあるということもあるのだろう。それでも、技術者たちが頭をひねってよいバイクを作ろうと努力した結果に生まれたエンジンがOHVエンジンであるということが感動的だった。

自転車に取り付けられていたようなエンジンがついているチョイノリが速いわけがない。また、速さを求めるものでもない。むしろ、自転車に内燃機関を取り付けて走らせようとしたことのすばらしさの原点を再確認させるバイクがチョイノリなのだ。

バイクに乗るということはその歴史に乗るということでもある。技術発展の上に乗っかって、手軽で安くて速くて安定している10万円前後のバイクを、単なる乗り物として利用するのは、ダメとは言わないがもったいないことだなあと思う。